1 月8日、石巻市かわまち交流センター(かわべい)石巻市民交流ホールにて
認定NPO法人育て上げネット子どもの将来相談窓口「結」の森本多美子先生を講師にお迎えし、
家族向けセミナー「我が子がつまづきから一歩踏み出すためにできること」を開催しました。
ご家族の方の他、支援機関や教育機関、県議会議員の方を含め、約20人の方にご参加いただきました。
親の視点と子どもの視点の違いや、動き出せない子どもたちの思いを説明いただき、
本人の社会参加までの段階や、家族が変化することの必要性、第三者につながることの大切さを学びました。
途中でペアになって、子どもに受け入れられやすい言葉かけの練習も行いました。
参加された方からは「勉強になった、早速試してみる」という感想も多くいただきました。
「出口はあるのかもしれないという希望を持っても良いのかな?と思えただけでも、とても満足」と感想を
書かれた方もいらっしゃいました。
ひきこもりで「わが子」にお悩みのご家族の方へのお問い合わせ先
子どもの将来相談窓口「結」 htttp://www.sodateage.net
メール:yui_q@sodateage.net
当日の質疑で時間の都合から回答できなかった質問に対して、後日講師の先生から回答をいただきましたので、
下記に掲載させていただきます。
Q1:就職についての話し合いをしたいけれど、切り出す言葉がみつかりません。きげんが悪そうなときどうしたらいいのか? 父親の悪口を言ってるとき、どんなふうに聞けばいいのか?
A :まずきげんの悪そうな時は避けましょう。良い反応は期待できませんよね。切り出し方については今の親子関係によります。挨拶や日常会話がある程度出来ている状態か、または殆ど会話の無い状態でしょうか? 後者であれば、まずコミュニケーションを改善し、挨拶や親子の対話が出来る状態にしましょう。お子さんの好きなことを話題にすると、徐々に口数が増えるはずです。その上で、メモや短い手紙(A4サイズ1枚が限度)を書き、これからの事を話し合いたいのでこれを読んで欲しい。そしてその後に話をしたい、と伝える方法を提案したいと思います。
手紙の内容としては、親がお子さんを大事に思っていること、これまでお子さんがご自分なりにこれからの事などを考えているだろうと思うが、お子さんなりの訳があって動くことが難しいのだろう、親も親自身のこれからの生活を考えて行きたいので、一緒に考えて行きたいと思っている、最近参加したセミナーで、同じように困っていたり迷っている若者が多く、そういう若者の社会参加や活動状況についての情報提供をしてくれたりするところがあると学んだ。あなたにも役に立つことがあるかもしれないから、見学したり情報収集してみないか?最近はオンラインで、ただ話が聞けるらしい、のような内容になるでしょうか。
一回だけですんなり話が出来ると期待せずに、「あの件だけどどう思う?考えてみてくれた?」と継続して話かけ、何回かこのようなメモや手紙も必要になるかもしれません。
また、父親の悪口については、「そうね~、困ったわね~」と聴くことに留めるか、思いっきり同調するか、内容によっては「私からも言ってみるわ」とサポートする道もありますが、どれがご自分にしっくりいくでしょう? どちらにしても「そんな酷いこと言わないで!」などと、お子さんの言う事を真っ向から「否定」したり「反対」したりするのは避けた方が良いでしょう。
Q2:「一回失敗したら人生の終わり」という若者が増えた悪循環は何処から来るのか?お伺いした動き出せない理由については思っていない。しかし「どうせ何も出来ない時死ねば良い、という自殺願望が前提にある若者への対応はどうしたら良いか?(広義のひきこもり)
A:今まで多くの若者の話をお聞きしてきましたが、「死にたい」と本当に思っている若者には会ったことがありません。「どうやって生きて行ったら良いか分からない、自分は誰の役にも立っていないダメな人間、だから消えたい、死んでしまいたい」というのが本音だそうです。対応方法としては「死にたいと思うほど辛いのね」と心情を分かってあげる事。そして、自己肯定感が上がるように家族の役に立つ家事役割を担って貰ったり、大人として「頼る、頼む、意見を聞く」など「役に立っている感」を増やしていく、好きなことを家族と一緒に話してコミュニケーションを増やしたりすることで「自殺願望」は収まっていくでしょう。更にはお子さんと同じような若者に支援機関などで接することで、「自分一人ではない」と希望さえ見えて来るでしょう。
Q3 腫れ物に触るような対応より、普通に接したらどうかと思っております。如何でしょうか?
A:全く同意見です。「腫れ物に触る」ようになるのは、これ以上言ったらもっと引きこもってしまうのでは、というご心配からだと思います。引きこもりに造詣の深い精神科医の斎藤環先生も仰るように、家族間の「対話」が大切です。その為には、まず「(仕事など)肝心な話」は避け、挨拶や日常会話、お子さんの好きなテーマなどについて話かけ始めることです。初めは下ごごろを捨てて、お子さんの反応を期待せず、諦めずに接してみましょう。気がついたらお子さんが会話に加わっていた、という事が起こるでしょう。お子さんに話しかけるコツは「非難、批判、否定」はせず、また親がやりがちな「正論、説教、説得」も避けましょう。お子さんの出来ていること、良い所を肯定する言葉をかけてあげて下さい。「君が健康で居てくれて良かった」、「一緒にご飯が食べられて嬉しいわ」、「お風呂洗いしてくれて助かるな~」等々です。
Q4:次の一歩が中々でないようです。何から始めたら良いか、親は悩んでいます。
A:進路の選択で悩んでいらっしゃるのでしょうか?最近の若者は、意外かもしれませんが、自分のやりたいことがわからない人や、自分の好きなことがわからない人が多いです。つまりどうしていいかわからないのです。それに加えて、人からどう思われるか心配な人が多いので、ますます決められない、選べない、状況になってしまいます。
最終的に決定するのはご本人ですが、親御さんが情報収集のお手伝いをすれば、選択肢が広がるというメリットがあります。
ただし、親御さんはご本人に手伝いが必要かどうかを「確認」してから動き出してほしいと思います。そして一度でも親御さんから声掛けをしていれば、お子さんは困ったときに頼みやすくなります。助けを借りながらでも自分で決定できたことは、きっと頑張れます。親御さんはお子さんの一番の応援団になってください。
Q5:高校卒業後一か月しか勤めていない。最初の頃は親が聞くと大丈夫と応えていた。最近相談を受ける。いろいろ話してみるが聞く耳を持たない。セミナーなんかにも参加してみれば良いのにと思うのだが、一歩を踏み出せないでいる。どうしてあげれば良いの。学校は行っていたと思う。5年間家にいる。自宅に畑があるので最近は畑を手伝っていると言うが、家ではパソコンとかしていると言う。親戚の人で39才くらいで一回も働いていない。高校は中退。希望がないです。
A:その方が高校を中退したときの事情が分かりませんが、精神的に辛かったのかもしれませんね。人間は心のエネルギーが低下してしまうと、考えがまとまらなかったり、やる気が出なかったり、活動的になれなくなります。自分に自信が持てなくて、人の目が必要以上に気になり、いわゆる引きこもりになる人が大勢います。あなたが、この方の話を否定しないで聴くことができるなら、この方に寄り添ってゆっくりと聴いてあげてください。アドバイスより黙って話を聴いてくれる人がこの方には必要かと考えます。この方は今は確かに、外で働いていませんが、自宅の畑を手伝っているのですから、ご本人もご家族も特に困っていないのではないでしょうか?
Q6:小学一年生の娘がおり、友達に嫌なあだ名をつけられて悩んでいますが、本人は「学校には言わないで欲しい」と言っています。親としては心配ですが、見守るべきでしょうか? また、親として、本人にどんな声を掛けてあげればいいのでしょう?
A:娘さんが嫌な思いをしていることをまずは受け止めてあげてください。
「そんなあだ名は嫌だよね。お母さんもそんなあだ名をつけられたらとっても嫌な気持ちだよ」と言ってあげてください。娘さんは安心できると思います。 それから、「友達が嫌なあだ名を言わなくなるために何かできることはないか、一緒に考えよう」と言って、話し合うのはどうでしょうか?親御さんから一方的に対策を指示するのではなく、娘さんにも考えるチャンスを与えてあげることが今後にとっても必要だからです。娘さんが無理なくできるアイディアがみつかったら、親御さんは娘さんを応援してあげて、その結果、娘さんは自分で解決できる子になれると思います。